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ベストなスペックを”求めない”機材選び

ベストなカメラを選ばなかった理由とその結果増えた強み

Written by : 編集長

published : 2018 7 19, modified : 2019 5 8

現代は消費社会である事はどうしようもありません。特に日本ではメーカーが新製品を出し続け、消費者がそれらを消費し続けないと経済が動かない仕組みになっています。それはまるで経済や社会自体が、古き良き「大切にモノを扱い大切に長く使い続ける」事を悪い事であると仕向けているようでもあります。
新しい高スペックなモノでないと「認めない」、その風潮は特にプロフェッショナルな分野の方が傾向としては強く感じます。古くとも良いアウトプットが出来る道具なんてものは、デジタルな世の中では所詮戯言であり幻だと言っているようです。
プロは喜び勇んで設備や機材に飛びつき、そのための先行投資、いっそ借金やローンまみれでも構わない、といった具合でしょう。 

個人的にプロとして所謂機材を使ったお仕事をしていると、よりハイスペックな「ベストなスペック」の機材を選ぶ理由は勿論イメージできます。しかしベストばかりを追い続けると事業に対してのオーバースペック、予算の無駄遣いになりかねません。そこは専門家として、必要十分をいかにカバーできる機材選びが出来るかが大事だと考えています。
要するに資金を機材にぶっ込み過ぎなケースが多いのでスペックを優先するのはやめませんかという話をしてみたいと思います。

今回は僕が少し以前に新しいカメラを導入した際に、購入に至るまでに考えたことやその流れを当時のメモを元に共有してみようと思います。

動画を撮影する為のカメラの購入

要件

まず、必要要件を考えました。
少予算の案件も多く、ワンマンオペレーションであることもしばしば。しかし、固定撮影のみでなく動きのあるもの、場合によってはクロップする必要性があったりなので、下記のような前提をざっくりと考えました。

  • 4K撮影
  • ”将来的に”電動3軸ジンバルを用いた撮影
  • 一人での現場であることも
  • ある程度バリエーションのある画作りもしたい

4K撮影・バリエーション

この要件だけ考えると、かなりの選択肢があります。
最たるものですと例えば、DJI社から発売されているOSMO PROも4K撮影可能でジンバルとカメラが一体となっていますので、携帯性を考えるとかなり省エネで魅力的でした。しかし、既存の機材の都合から撮れる画のバリエーションを予算内で充実するには難しいことに気づきます。また、ジンバルでの撮影が前提となるカメラですと、今度は固定での撮影に支障が出る可能性もあると感じました。

その既存の機材の都合とは(バリエーションとも関係してくるのですが)、画作りの基本となるレンズの選択肢でした。僕はもともとCanon社のカメラをメインの機材として利用しておりましたので、EFマウントと言う規格のレンズを複数所有していました。このレンズを活用できるとカメラをリプレイスしても今までと同様のバリエーションで撮影できます。
今回はこれを優先することを前提に考えたので、前述のOSMO PROは候補から外れたことになります。(マウントの違いもそうですが、仕組み上、レンズの重さのほうがネックになりました)

ジンバル

この時点ではジンバルは導入前でしたが、導入も視野に入れてみようかと思いました。まずはスペックを調べました。
各社様々なモデルを販売していますが、その最も大きな差はペイロードと呼ばれる積載可能重量だということがわかりました。

例えば、かなり古くから多くのモデルを発売し大人気のZHIYUN TECH社の下記の2機種だとペイロードにこのような差があります。ペイロードが大きなものは比例して高価になっていきます。

CRANE有効ペイロード:
最大: 1800 g
最小: 350 g
CRANE 2有効ペイロード:
最大: 3200 g
最小: 500 g

ZHIYUN TECH社ウェブサイトより

これを踏まえると、軽量なカメラであればジンバル購入にかかる出費が抑えることができることがわかりました。ということは、もしかしたらカメラのチョイス次第でジンバルの購入まで踏み切ることができ、一気に撮れる画のバリエーションを広げられるのでは?と気づきました。

ワンマンオペレーション・そもそものひとりっきり現場

かなり大事な要素で、一人での現場というのは機材の搬入や運用に対してかなりの負荷がかかります。車での移動だとしても現場のすぐ側につけられる場所なら良いのですが、屋外であっても車の近づけない場所やビルの上階が現場となると、ひとりで何往復もすることになります。
都内の現場だと場合によっては電車やタクシーで移動することもあります。そうなると携行可能な機材が本当に限られることになります。
カメラ自体が小型・軽量であることがかなり重要であることが顕著に感じられます。下記はSony社から発売されている2機種で、センサーサイズの違う所謂フルサイズのものとAPS-Cのものを重さの観点で比較したものです。

質量α7RIIIα6300
質量(g)(バッテリーと”メモリースティックPROデュオ”含む)約657g約404g
質量(g)(本体のみ)約572g約361g

Sony公式より

フルサイズセンサーは画作りのうえでメリットが大きいですが、ワンオペを前提にすると大きく・重いというデメリットも含んでおり、一長一短であることがわかりました。
前述の通りジンバルのペイロードや三脚の選択肢にも影響します。カメラボディはどのような案件・現場であっても常に優先順位の上位であり、僕はできるだけボディを使い分けることをしないようにしているので、カメラボディの重量が基本になります。

どういうことかというと、例えば、前述のジンバルはペイロードが大きいと今度はジンバル自体の重量も重くなるのです。(Crane2はCraneの1.5倍重いです)三脚も同様です。なので、カメラボディが重いと、機材全体もどんどん大きく重くなります。

最終的に

僕がこのタイミングで選んだ機材は下記のようになりました。

前述したSony αR IIIがカメラとしてはベストの選択肢であることは明確でした。数多くのプロフェッショナルなフォトカメラマンも愛用し、高精細な画が撮れることが分かっており、動画の撮影にも定評があったからです。α6300はAPS-Cとなり、「プロがAPS-Cなんてありえない」とおっしゃる方も多いでしょう。

しかし、価格差はかなり大きく(約3倍)、であればカメラの予算を抑え、シネマトグラファーとして画のバリエーションを増やす方向に予算を使えるのでは、と考えた結果となります。また、僕自身APS-Cでの撮影の経験があり好んでおりましたので、フルサイズセンサーはある種のオーバースペックとも感じました。というのも、勿論プロとして追い求めるものはありますが、お客様のニーズに対してフルサイズでの画が必ずしも必要ではないからです。実際に現在α6300でお仕事をさせていただいてますが、問題になったことはなく、むしろ現場では「最近は小さいのにちゃんと撮れる」ということで好評です。

今回はその他の細かい話は割愛しますが、カメラをα6300に決定し、ジンバル・レンズ・3脚に予算を配分しました。これで、下記のようなメリットが自分の武器として増えました。

  • 4Kの撮影が可能になった
  • 揺れのない手持ち撮影が可能になった
  • 簡易的にドリーやジブのような撮影も
  • 動画撮影でも簡単かつスムーズなフォーカスの撮影
  • 今までより軽量な3脚

これは、当時活動の幅を広げるために新たな営業活動を始めていた僕にはとても大きなものでした。「ベストなスペック」でのカメラ選びをしていたら、このようには出来ませんでした。(当初はボディのみの買い替えの予定でした)案件の性質、お客様のニーズ、ワークフロー、などをしっかりと理解し、見栄を張ることのない機材選びはとても大事だと思います。
フリーランスとして活動される方や将来撮影を仕事にされる予定のある学生さんなど、予算に限りのある方々の予算選びの参考になれば光栄です。

Written by : 編集長

aft9.tokyo編集長です。
フリーでITコンサルタント・プロモーション・時には写真や動画を担当することも。
ITに関するニュース・コラム、ガジェットのレポートなどをお届けします。

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